セレ子からの、モーニング・チャット。

(S)セレ子「おはよー、お仕事進んでるの? スケジュールかなりタイトでしょう?」

手につかない、仕事が。

(Y)夕美 「昨日ローション買ったから、そればっかり気になっちゃって。笑」

健太、ローション
健太、ローション
健太、ローション

S 「ヤダー、朝からホルモンバランス乱れすぎ!エロ怪獣!」
Y 「いや、違う。これはピュアな好奇心。小学生の化学実験みたいなさあ」
S 「どんな化学反応起こすのよ」
Y 「すごいんじゃん!世紀の大実験。性器の・・・。笑」
S 「もーやめて!朝食がまずくなるわ!わたくしはこれからエステで女磨き。とにかく仕事しなさいよ!姉たま!」

親愛なるビッチ。おひげの生えた私の妹分セレ子は、例えるなら、"私" という風変わりなアーテイストのキュレーター。体を張った私の恋愛体験をセレ子は"アート"と呼び、ひとつひとつの物語を最初から最後まで熟知する、唯一の人物である。Intuition (直感)という、まやかしみたいな恋愛ファンタジーの中で生きる私を、いつもセレ子はTVを見るように鑑賞している。

セレ子は今、アジアのリゾート地でゴージャスなバカンスの真っ最中。複数の会社を所有するジジイ(と、セレ子は呼ぶ)を旦那に持ち、お金に心配のない人生を送る "ゲイ・マダム" セレ子様。ホテルでの朝食中、ローションの話に拒絶するふりはしても、携帯の向こう側でニヤついてるのはミエミエだ。っていうか、あの六本木のアダルトショップ、セレ子が教えてくれたじゃない!

「スイマセン。どのローションが人気ですか?」

「あー、一番人気はダントツそれ。"ジューシー・ラブ" 。少量で乾きにくいですよー」

「舐めても大丈夫?」

「いやー、舐めるんだったら、そっちの " ぺろぺろ天国 " 。ストロベリー味からマンゴー味まで6種類ありますよー」

舐めてみる。マズイ。

「じゃあ、こっちの一番人気に。」

健太にローション。
健太の興奮して、子犬みたいに喜ぶ顔が目に浮かぶ。

銀座のギャラリーで軽いミーティングの後、1人でふらりと立ち寄ったクラシカルなバー。カウンター席に隣り、ちょっと悩んで、しばらく封印していた"あれ"をオーダーしてみた。

「 マティーニ、お願いします」

あの人から教わった、ロンドン・No3・ジンを使ったマティーニ。あの人の全てにおいて完璧なスタイルが、いまだ天国のように愛おしい。そして、地獄のようにムカつく。目の前にスッと出てきたグラスの、華奢な足を不安定に持ち上げ、ひんやりと透明な液体に唇を運ぶ。マティーニの華やな苦さが、私を2人のあの時に連れ戻す。私だけが知ってる、あの人の表情、声、身体の動き。愛おしく、ムカつく。

"ドン" と、いきなり開いたドアの音に振り向くと、20代らしきスーツの男が立っていた。場違いなところに来ちゃった...みたいな顔で、辺りを見回し、私の隣にヒョコッと座った。おじさんの隣は嫌だったんだろう。自信がなさそうにメニューに目を通す姿が何だか、かわいそう。よく見ると、なかなかイケてる。

「ここのマティーニ、美味しいですよ」

意外にも20歳差、という未知の世界に踏み込むのは頭で考えるより簡単で、カクテルの魔力が作り出した危なっかしい直感が、2人の脳にGOサインを出すのに2時間もあれば充分だった。バーを後にした私達は、すぐさま磁石のようにくっついて、人気のない路地で終わりのないキス。健太が右手を上げて止めたタクシーの行き先は、私のベッドの上だった。

昨日、部屋掃除しといてよかった。

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