人生はイタズラだ。
いつも何の前触れもなく、目の前に恋愛の扉が現れる。そして、私はいつも躊躇なく果敢にもその扉を開ける。ただし、扉の向こうは決して楽園とは限らない。しとしと憂鬱な小雨かもしれない、ピーカン照りの砂漠のど真ん中かもしれない、底なし沼に続く崖かもしれない。どんな結果が待っていようとも、とにかく私は扉を開け、向こうに広がるワンダーランドへ一目散かけていく。バカバカしくも大真面目に知りたいのだ、この先に何があるのかを、どんな結果が私を待ち受けているのかを。体験だけが唯一信用できる人生の真実であり、体感が私の細胞を作っていく。私の恋愛には悲劇と喜劇の、ふたつしかないようだ。でも、ないよりあるほうが、断然ワクワクする。


健太にローション。
20歳年下の彼との未来を思い描くほど、浮かれてはいない。浮かれちゃいけない。だけど、健太と過ごす幼稚で甘酸っぱいひとときに、すっかり心が支配されているこの7週間。けっこう焦る。私の部屋は週に一度、若い男がウロウロする不思議な空間となり、それが、当たり前になっていった。東京出身、ゆとり世代、ビジネスマン。ビールとコンビニ弁当と野外フェスでできている健太の身体は、日焼けしていてガッチリと弾力がある。後ろからぎゅっと抱きついて、健太の太い首筋にキスをする。ココナッツシャンプーの香り。

健太、もうすぐ夏が終わるね。

今週末は健太の大好きなラザニア作って、EDMをおもいっきり流して、チェリービール飲んで。
たくさん笑って、たくさん抱き合って、たくさんキスして。
「ローション使ってみる?」冗談みたいに転げあって、ひとつになって。
汗とローションが混ざりあった2人の肌に、まだ真夏みたいな9月の陽が射すころ、2人の身体は真っ白な砂のビーチに放り出される。2人だけの秘密のトリップ。

でも、この恋ひとつだけ取り扱い注意。
エリート街道まっしぐらの健太、1 年後にはドイツへの赴任が決まっている。
健太と私はそれまでの関係。本気はタブー。
だから好きと言わない。好き?とも聞かない。
「オレのこと邪魔になったらいつでも言って」健太の言葉がトゲみたいに、つんと胸を刺す。
叫びたいほどお互い夢中だけど、ただ、だまってじっと見つめ合う。

「楽しかった。じゃあね 」

いつも、健太をドアから送り出すように。
1年後の最後の日も笑顔でね。
きっと、そうしようね。

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