「化け猫?そりゃ、ひどいな」

私を化け物扱いしたセレ子の悪態を、ドラキュラに告げ口した。

「それに、アリアナとも違うよ」

そりゃそーだ。アリアナの親の年齢だもん。
って言うか、私のこといくつだと思ってる?
もしかして、私の恰好に引いてる?
今更の羞恥心に汗がドッと出てきた。

「君の方が、色っぽいよ。」

マジ?

「何ていうか、不思議な魅力がある。若けりゃいいってもんじゃないよ、女性は」

マジー???!

「さっき歌ってるときから、気になってた」

マジかー???!!!

脳内アリアナが、今晩2度目の大きなガッツポーズ。
お世辞でも何でも、イイ男に褒められりゃ嬉しいに決まってる。
私をじっと見つめる、その色っぽい目…。
私だけに、あの甘い歌声でささやいてほしい。
広がるモウソウ。膨らむキタイ。火照るカラダ。

はぁぁぁ。私、恋しちゃう。

「おふたりさーん、記念撮影!」
ガンジーがふざけて、見つめ合う2人にカメラのレンズを向けた。
私のウエストをぐいっと引き寄せるドラキュラの腕。
バランスを崩してマントの胸元へ倒れこむ私。
急に縮まる2人の距離。
「サン、ニー、イチ。ナマステー!」
カメラのフラッシュ。
ドラキュラの唇が私の耳元に。そして、ささやいた。

「当てられなかったから、賞品なしか」

結局、ドラキュラは私の仮装が誰かを当てられなかった。
残念そうに私の猫耳を、綺麗な指先でちょんと突く。

「じゃあ… 残念賞あげる」

ドラキュラさん、手ぶらで帰すわけにはいかないでしょ。
興奮マックスの脳内アリアナが、私を操縦する。

「ねえ、2人でここから抜け出さない?」

アメリカのハイスクール・ドラマみたいなセリフ。
ドラマの中なら、アリアナが主人公だったら…。
相手の男の子は大喜びで「Sure ! 」もちろん!って、答えるでしょ? ほら、イエスって言って!

ドラキュラが何か言おうとした瞬間。誰かがドラキュラの後ろから、思いっきり抱きついてきた。

「ヨウスケー、ライブ終わっちゃったあ?ザンネーン!」

甘ったるい声。

誰? 誰だ...。20代前半の、ビクトリア・シークレットみたいな白い羽をしょった、ピンクのプルプルリップ、まっすぐ伸びた長ーいナマ足、ピチピチの肌、大きな目にフサフサのまつ毛にポニーテールをゆらゆらさせた、ハーフの女の子。

まるで、本物のアリアナ・グランデだ。今晩、アリアナのソックリさんコンテストがあったら、間違いなくこの子が優勝だろう。

本物のアリアナが私を見て

「オネーサンも、アリアナ? キャハハ、一緒〜、ウケる〜」

ウケた。それに、一応アリアナだってことは、わかってくれた。

「ねーヨウスケー、六本木のクラブに行こうよ。ここ、年齢層高すぎ!あたし、浮いちゃう〜」

確かに、本物のアリアナは可愛すぎて浮いてるし、店中の若くない男達がみんな彼女を見ている。
ドラキュラがバツの悪そうな顔をして、私に言った。

「じゃあ、またどこかで」

結局、若いほうがいいんじゃん!

ドラキュラにべったりくっついて店を出て行く本物のアリアナ。彼女のプリプリ揺れるお尻を呆然と眺めながら、年々重力に負けていく自分のお尻を触ってみた。

ぜんぜん悪くないじゃん。

私の方があの子より面白いはず。話題だって豊富だし、理解力だってある。面倒なワガママも言わない。料理だって得意だし、ぶり大根とか。それに、それに…セックスだって、あんな若い子に負けないもん。

あー!!!!!!!

敗北を赤いヒールで蹴り飛ばして、思った。
良くも悪くも、長く生きてると強くなる。と言うか、いまや開き直りの天才だ。

「ねえ、カラオケ行こうよ!アリアナ、ガンガン歌ってやる!」

化け物達を引き連れて、いざ、カラオケ。

って言うかさ、よく考えたらアリアナの曲、1つも歌えない。
”アイ ラブ アリアナ!” でも、私は、”THE 昭和の女”だ。
邪魔っけな猫耳を外して、朝まで聖子ちゃん歌いまくってやる!

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