クリスマスがやって来る。
素直にクリスマスが楽しかったのは、いくつまでだっただろう。

40歳を超えた今は、"聖なる夜"を祝わなければいけない様な街の雰囲気と、何事もないかの様にやり過ごしたい自分との間でウロウロと葛藤しているうちに、なんとなーく、この西洋の儀式は終わっている。

しかしながら、そんな私にも忘れられないクリスマスのひとつやふたつはある。

18歳の終わり、19歳になる直前に私は留学のためアメリカへ旅立った。

私が小さい頃、親戚のオバちゃんが連れて行ってくれた古い劇場で見たアメリカ映画。スクリーンの中で繰り広げられるエキサイティングな世界を夢見ながら、北海道の小さな港町からニューヨークへ。

18歳の頭の中に次々と浮かんでくる、アメリカ映画の胸キュンなシーン。ヤキモキする恋愛模様、イカした男の子、スラングにハイファイブ、ダンスパーティーに、熱いハグ、甘いキス…。キスのその先…。AとかBとかCとか…とうとう経験しちゃうんだ…。それも、ニューヨークで!結婚するまで純潔を守ろうと思ってたなんて、急にちゃんちゃらおかしくなってきた。

両親に大切に育てられてきた1人娘の私は、突如、自由の国アメリカへと解き放たれてしまった。

はるばる来たぜ、ニューヨーク!

がしかし、何かが違う。
私の思い描いていたニューヨークと。

私のニューヨーク =(イコール)
目の前に広がる摩天楼、オシャレな街並み、せわしく行き交う様々な人種、イエローキャブ、最先端のファッション、路上のホットドックスタンド、都会の危険な香り…。

なのだが、それらがひとつも見当たらない。

私がたどり着いたニューヨークは…
車の少ない道路、人もまばら、暇そうなガソリンスタンドに冴えないチャイニーズレストランが並ぶ、オシャレな要素がひとつも見当たらない田舎町だった。危険などころか、自然がいっぱいの公園で北海道でも見たことのないリスが2匹、目の前を元気に走って行った。

18歳の私はわかっていなかった。
ニューヨーク州には62の郡があるのを。
私が思い描いていたのは、ニューヨーク州のニューヨーク郡のニューヨーク市。
私がたどり着いたのは、広ーいニューヨーク州のどこかの田舎町。

期待は大きくハズレた。

でもさ、アメリカ人はみんなかっこいいのよね?俳優とかモデルみたいなはず…だよね。映画で見たもん。トップ・ガンのトム・クルーズくらいのレベルはゴロゴロいるでしょ。

しかし、大学の寮に到着した日、カフェテリアで遭遇した大学生の群れはオシャレとは程遠く、やたらと太い腕を強調するタンクトップを着たマッチョな男達はまるで、ゴリラだった。

この時点で私の淡いアメリカンドリームは、マッチョゴリラの群れに叩き潰された。

勉強に励もう。

そうそう。勉強しに来たのよ、私。
目標は、1)英語の習得、2)大学入学、3)異文化交流…。
ハンサムなアメリカンボーイとイチャつきに来たんじゃないでしょ。
いや、それもりっぱな異文化交流のはず…。でも、ゴリラしかいないしな。

カフェテリアで初めて飲んだ湿布みたいな味のドクターペッパー、ブロッコリーもカリフラワーもマッシュルームも生のままのサラダ、伸びきったスパゲティ、マッチョゴリラ。先ずは新しい環境に慣れないと。

クリスマスまで、あと3ヶ月か…。

ただいま、英語力10%、友達ゼロ、ハンサムゼロ、BFゼロ。

To be continued

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