摩天楼もない、ハンサムもいない、マンハッタンじゃないところ、広ーいニューヨーク州のどこか片田舎にたどり着いてしまった私。オシャレでエキサイティングな "恋愛 イン アメリカ" の計画はひとまず置いといて、私は勉強に勤しむことを心に誓った。

ニューヨーク州立大学付属の英語学校で、まずは英語の習得。様々な国からそれぞれの理由でここへたどり着いた、個性豊かなクラスメイトに囲まれて、心機一転、学生生活が始まった。

英語の習得と言いながら、まず仲良くなったのは日本人のマコさんと知子ちゃん。
マコさんは東京で働くことに疲れ、新たな人生を模索しにアメリカへやって来た元OLさん。後々知ることだが、マコさんは28歳にしてバージン、一度も男性と付き合ったことがなかった。マンガみたいなオカッパ頭で背の小さいマコさんは、男性経験はないが妄想は豊かで、こんな男にこういう風に襲われたい…とか、いつも大真面目に語っていた。ちょっと太めで細い目に丸い眼鏡をかけた知子ちゃんは、青森から来た私と同い年の18歳。知子ちゃんも過去の彼氏はゼロ、ゆえにそういう経験もゼロ。はっきり言ってモテそうもない2人とそこそこモテる私。男性経験のない3人が、ここニューヨーク州の片田舎に集結した。

外人勢はというと、メキシコの太陽みたいに明るくて優しいマリア。会話の80%が意味不明の英語を話すトルコのオバちゃん。「母国のソーセージには紙が混ざっている…」と、嘆いていたロシアの主婦。「君の足イカしてるぜ。でも、君はその使い方をわかってない」当時流行っていたロックを歌いながら言い寄ってくるイランの男。そして、イタリアの生意気娘、ラウラ。挨拶しても、ツンとすましちゃってホント嫌な感じ。 たまたま寮で同じ部屋になっちゃったオカッパのマコさんは、このイタリアンビッチのワガママにいつも振り回されていた。

クラスの一番後ろの隅っこの席。そこで"アイツ"が一生懸命、あの生意気ラウラに話しかけている。
授業の1日目からずっと気になってる"アイツ"。サラサラした髪の毛に印象的な大きな目、長い脚にリーバイスの501をはいた背の高い男の子。予想に反してアメリカで初めて私の気を引いたのは、アメリカンボーイではなく、ジャパニーズボーイだった。"東京生まれの東京育ち、有名校出身のワル"らしい…というちょっと謎めいた"アイツ"のうわさ話に、すっかり興味が湧いてしまったのだ。

クラスメイトとはつるまないくせに、ラウラだけには積極的なアイツ。おでこにニキビのある愛想のないラウラに、笑顔で話しかけるアイツを見ていて、日に日に増していく私の胸の奥のモヤモヤ。生まれて初めて芽生えた男性への嫉妬心。「私のことを見て!」今までに経験したことのない自分の感情に自分でも驚いた。

それから私は今までの私とは全く違う人間みたいに行動し始めた。男性に奥手だった私が、来る日も来る日もアイツに話しかけた。あからさまな私の"好き好き光線"に気が付いていながら、興味がない素振りのアイツ。そんなのお構いなしでアイツに近寄り、気を引こうと私は必死だった。恋愛経験のない私には、それしか方法が見つからなかったのだ。駆け引きなんて知らない、ド直球の真っ向勝負で挑むしかなかった。

ある晩、クラスメイトが集まって寮の部屋でパーティーをした。
パーティーが終わる頃、アイツとの距離を一気に縮めたかった私は、勝負に出た。

「部屋に行っていい?」

部屋に行っていい?イコール、そうゆうことが起きてもいいのよ…ということ。付き合ってもないし、仲のいい友達でもない関係の上でこのセリフはかなり危なっかしい。今考えると、ただの軽い女に思われてもしょうがない…が、とにかくアイツをもっと知りたい、その一心だった。

アイツの答えは、

「ダメ」

部屋に行っていいか、男性に聞いたのも初めてだから、それを断られたのも初めて。とっさに出た自分の質問にも、相手の返答にもびっくりしながら、でもなんと、私は引き下がらなかった。無駄に強い自分の意志に、自分で呆れた。

行きたい!
ダメ。
行きたい!
ダメ。
行きたい!
ダメ。

もう、お互いの主張している意味が何なのか、わからなくなってきた。
結果、私の強すぎる押しに負けて、アイツは私を寮の部屋に入れることとなった。
初めて入った異性の部屋は薄暗く殺風景だった。目の前のシングルベッドと乱れたブランケット。本やらノートが散らかった、使われてなさそうな机。開いたままのシルバーのトランクの中には、見覚えのあるアイツのTシャツや、デニムが無造作に投げ入れられていた。

もう、無駄な会話はいらない。決心はできている。
今晩、ここで、アイツに身をまかせるのだ。
シングルベッドに2人。

いよいよ、これからだ。

「え!?初めて?処女なの?」

めちゃくちゃ驚いたアイツが、聞いたことのない甲高い声で叫んだ。


to be continued.....

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