想定外の急展開で"スシデート・イン・ギンザ"の運びとなった、CEOと私。
きらきら星付きの"CEOな"お店で、おスシのフルコース。
大企業のCEOとアーティスト。
全く違う世界に住むふたり。
彼の話すべてが私にとって、私の話すべてが彼にとって、最高に新鮮だった。

「ユウミ、ホテルの部屋にエスプレッソマシーンがあるんだけど、来る?」

おっと、CEOなのにベタなセリフ。
こういう時は万国共通、コーヒーとかで部屋に誘うのか。あはは。

押しの強さは確かにプレイボーイっぽいけど、詐欺師ではなさそうだ。話していて気が合うことは理解した。いろいろ話を聞くと苦労人で悪い人ではなさそうだし。手も繋いじゃったし。
でも、昨日出会ったばっかりのガイジンと、初めてのデートでホテルの部屋まで行くのはなぁ…。

繋いでいた手を、パッとほどいて

「今晩はもう帰る。ステキなスシディナーをありがとう。東京に来たとき、また連絡してね!」

と、告げてサッとタクシーに乗った。

それから半年間、CEOの猛攻撃が始まった。
あの晩、私に断られたのがよほどしゃくに触ったのか、毎日毎日熱心なメールを私に送ってきた。私のつれない態度が彼の闘争心に火を付けたらしい。
自信満々のCEOは、狙った獲物は絶対逃さないタイプのようだ。

「男ってバカね」

なぁーんて呟いて、迷惑そうな…フリしちゃって。
CEOから送られてくる甘い言葉に、心トキメクのがすっかり私の日課となってしまった。
興味のある男からの猛烈アタックに、こちらもだんだんと燃えてきた。

「2月、キミに会いに東京へ行くよ」

もちろんビジネスが目的で東京に来るのは知っているけれど、"君のため"みたいなCEOのメッセージにニヤニヤが止まらない。

あらっ、その日バレンタインじゃないの!?

6ヶ月間、私に毎日甘いメールを送り続けた彼へのご褒美にチョコレート…。
イヤイヤ、私をプレゼントするしかないでしょ!

そうと決めたら直行する場所は、ただひとつ。
セクシーなジェシカが店長を務める、セクシーなランジェリーショップ "ピンク・チェリーズ"。

「きゃあ。夕美さん、お待ちしてましたぁ~ん」

ジェシカはスペイン人と日本人のハーフ。でもって、ニューハーフ。
いろんな要素が半分づつ入り交じったジェシカのボディーはあちこち工事済みで、女の私も思わず触れたくなるような完成度。

「ジェシカ、とびきりセクシーなのお願い!」

ジェシカにCEOとの状況説明はメールで事前に伝えてある。

「夕美さん、任せといて!用意はバッチリよ!」

私の要望に答えて、ジェシカがマジックショーの万国旗みたいに、次から次へとランジェリーを引っ張り出してきた。

燃えるような赤のレースブラ、ブラックサテンのTバック、レースアップのコルセット、ピンクのスケスケのベビードール。
ランジェリーの嵐。
うーん、どれもこれも捨てがたい。

「夕美さん、これよ!これでCEOも夕美さんの虜よ!」

2時間にわたるジェシカとの激しい選考会の末、CEOとのセクシーな初夜を共に迎える"ザ・ベスト・オブ・ランジェリー"を選出した。

バレンタインだもん。選んだのはやっぱり、真っ赤な勝負下着。
ちょっと透けたチュールのブラとショーツを身につけた私はかなり、エロい。

CEOの手で焦らすようにゆっくりと脱がされたドレスの下から、露わになったブラジャーとショーツ。絡みつく彼の熱っぽいオトコの視線。興奮して火照った私の体をまさぐる大きな手。

「はぁぁぁぁぁ」

もう、想像しただけで…。

「夕美さん、ヤリまくってね!」

「オッケー!ヤリまくってくるね!」

準備は完璧。カモーン、CEO!

とうとう、その夜がやってきた。

ディナー中。
真っ赤なランジェリーをまとった私と、その私を激しく求めるCEOとのベッドシーンが頭の中をグルグル。体が熱くなってきた。我慢してたのはCEOのはずが、私の方が我慢できなくなってきた。豊かな想像力のおかげで、私の欲望のメーターの針は完全に振り切れていた。

今回はCEOに誘われるまま、タクシーで彼がステイしている老舗ホテルの部屋へ。
エスプレッソマシーンはあったが、もちろんコーヒーは抜き。
激しく唇を重ねあい体を弄り合う二人は、ラグビー選手のように勢いよくベッドに倒れこんだ。

「きたぁぁぁぁぁ!この瞬間!CEO、見て見て!私のランジェリー!」

しかし、慌てすぎて電気もつけずにベッドに飛び込んだので、部屋は真っ暗。
興奮しまくったCEOは、私のニットワンピをわっと脱がして、真っ赤なブラとショーツを私から引っ剥がした。

「ウェイト!ストップ!」

CEOは、私とジェシカが2時間かけて選んだランジェリーを真っ暗な部屋で、あっという間に脱がしてしまった。

「ちょっとぉー!待ちなさいよ!」

「"待て"って、もう、半年も待ったじゃないか!」

「待って!ランジェリー選んだの、"あなたのため"に!なのに、見もしないで、すぐ脱がしちゃうなんて!」

「女性ってさ…"あなたのため"に選んだとか言うけど、それって、自分のためでしょ?」

「 … 」

「結局、自分が着たいもの選ぶでしょ。自分のために」

「 … 」

「それに、男は脱がした後のことしか、考えてないから。着てるモノなんか気にしてないよ」

「 … 」

CEOに脱がされた赤い残骸と洋服を素早く身につけ、私はホテルの部屋を無言で後にした。

帰りのタクシーの中。
さっきのCEOの発言にマジ、キレた。
だけど…。
確かに"自分のため"かも。

セクシーなランジェリーを付けた自分に興奮して。
その自分が相手を興奮させるであろうことに興奮して。
自分を興奮させるための、自分のための行為。

ランジェリー選びはまるで、"ひとり前戯"だ。

この儀式は誰が相手でも、きっと同じだ。

"昨日の夜は本当にごめん。
もう一度、君に会うチャンスをくれないか?"

朝からCEOの謝罪メール。

CEOからの謝罪をあっさりと受け入れ、その夜、私は再びCEOのホテルの部屋を訪れた。

ドアが開くとそこには、申しわけなさそうに笑うCEOが立っていた。

「ユウミ、また会えて嬉しいよ…」

と、言いかけたCEOを押しのけて、私は部屋にズカズカと入って行った。

「今晩は、ゆっくりと、慌てずに…」

CEOの言葉を遮るように、私は着ていたファーコートをCEOに向かって"バーン"と、開いた。

唖然とした彼の顔。

「だって、着てるモノなんか気にしてないんでしょう?」

CEOの言い分を考慮した結果。
今晩は太ももまでのストッキングとピンヒールのみ。
お望み通り、他には何もつけずに来た。

寒い中、こんな格好でタクシー飛ばして来たんだから。
ボーッと突っ立ってないで!

今晩は"ふたり前戯"で、早く暖めて。


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