「あー暑いわああ!」

妹分のゲイ友、セレブのセレ子がチャットでボヤく。
トウキョウは6月というのに、もう真夏の天気。

「やっとサマードレスが着れる!」

北海道生まれのくせに寒さにめっぽう弱い私はセレ子とは違い、2年前にブラジルで買ったサマードレスが着れるシーズンに入ってウキウキ。平凡な日常のテンションを一気にアゲてくれる、ピンクと赤が鮮やかな大きなレトロフラワーのプリントや、背中が腰まであらわになるその情熱的なデザインは、私のラテンの血に火をつける。

"あなたを例えて言うならば、南国の青い空に飛ぶ七色の…極楽鳥ね"

20年間通っているタロット占いの先生に、そう言われたことを思い出した。
一緒に行った友達は、"北国の湖の底にジッとしているカメ"…って言われてたっけ。

そうだ、私の前世はラテン系に違いない。

「ドレス?」

「ブラジルで買ったやつ」

「あのド派手なドレスね。姐たまにお似合い!」

「でしょー!」

「日本でアレを着て平気で外歩けるの、姐たまだけよ!」

セレ子の褒め言葉には、いつもトゲトゲが入っている。
だけど、40代になって社交辞令やイヤミを含んだお世辞も否定せず、ありがたく自分よりに受け止められる図々しさが身についた。年をとるのも悪くないもんだ。

「ブラジルまた行きたいなあ」

明るく降り注ぐ太陽、緩やかに流れる風、朗らかでおおらかな人々、美味しいお酒にバラエティーに富んだ多国籍な料理、そして、イケメン…。( イケメンはゲイの確率が高いけどね… )
出発前にアレコレ聞いていた怖いネガティブな評判はすぐさま吹っ飛んで、生まれて初めて訪れたブラジルに、私は一瞬で恋に落ちた。

もし…もしもよ、セクシーなブラウンの瞳の、ちょっとマッチョの、小麦色の肌がワイルドなイケメンが、私の耳元でボサノバなんてささやいちゃったりしたら、ずっとブラジルに住んじゃうもん!

自分で思い込んでいた"前世ラテン系説"は、ますます信ぴょう性を帯びてきた。

「姐たま、ブラジルで新境地開いちゃったしね」

「新境地?あはは」

「あの人とまだ連絡取り合ってるの?」

「もー2年前の話よ!ないない!」

「あら、残念」

私の恋愛がはちゃめちゃなカオス状態であることを、セレ子はいつも期待している。

「あの後、彼女ができたみたい」

「姐たまは、ひとときのアバンチュールだったってことね」

「インスタに写真が載ってた」

「その彼女の?」

「そう」

抱き合った2人の写真。ポルトガル語で"愛しいマリア"の文字。

「ふーん」

つまらなそうな、セレ子。

ひと夏のアバンチュール。
ラテン系の恋は激しく燃えるのも早いが、その炎が消えるのも早いのね…。

そんなところも、私に似てる。

to be continued...

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.